『スマトラ警備隊』相対性理論×『傘がない』井上陽水

相対性理論(バンド)がいいよいいよ、とそこかしこで聞いていたのを今更ながらに聞いてみた。
確かに心地いい。



何平洋よ〜


シフォン主義

シフォン主義



とりあえず自分がピンと来たのは『スマトラ警備隊』の歌詞。
倦怠感がすごく良くて、厭世的。それがいくところまでいって、批評になってると思う。


中でもポイントは、
一回目サビの
「太平洋 大西洋 ここ一体何平洋よ」
と、
二回目サビの
「誰か止めて あの子のスーサイド」
じゃなかろうか。




これをなんとなく解釈すれば、


自分たちがいる「いま」「ここ」を、何平洋と名付けてもらっても構わないけど、
とりあえず、スーサイド(自殺)してる人がいるんだから、まずそれをなんとかしてよ。


そんなイライラした気持ち、だと言えるだろう。



確かに、「生き辛さ」とか「閉塞感」「窒息しそうな状況」などなど、現在の若者世代を支配する「空気」に対して、名前はたくさんつけられてきた。その中にいる僕たち自身も、同じように色々と名付けてきた気がする。しかし、実はそのどれも、しっくり来たことなんてないし、上手く言い表せた二日後くらいには、「やっぱり違うよなぁ」と自己言及を始めてしまう。それが、次々と新しい言葉が出てきた理由だと思う。


でも、やっぱり問題は、自殺者がいることだ。




で、思い出したのが、井上陽水の『傘がない』。

都会では 自殺する若者が増えている
今朝来た新聞の片隅に書いていた
だけども問題は今日の雨 傘がない


学生運動の盛んな頃に「そんな主義主張よりも、傘がないことが問題だ」と言ったこと、その重要さは今でも指摘される。革命だ!と息巻いていたあの頃、自分たちは一体何を争っていたのか、反省する本がいくつも出ている。

しかし、反省が続く今の状況は、実は「そこから学ぶことがあるかもしれない」という社会の無意識の表れなんじゃないかとも思う。『スマトラ警備隊』のメッセージを、「カテゴライズよりも、自殺者が減らないことが問題だ」とすると、確かにきれいに重なる。



とした時、この二つに通じる問題とは何かと考えると、それは、やはり「敵がいない」ことの不安だと思い至った。学生運動が下火になって「敵」を持てなくなった1970年代の若者の状況(参照)と、価値観がフラット化して「仮想敵」しか作れなくなったゼロ年代の現状は、とても似ている気がする。

『アキバ通り魔事件をどう読むか!?』/斎藤環


自分自身と敵対するかのような彼らの自意識は、「敵の見えない時代」である現代の陰画として生じたのかもしれない。もしそうだとすれば、まず回復されるべきは「健全な自己中心性」であり、「まっとうな被害者意識」ではないだろうか。あえて仮想敵を作らずにそうした回復がいかに可能となるかが、あらためて問われなければならない。


健全な自己中心性、ってのは難しいよなぁ。



スマトラ警備隊 歌詞(引用)
作詞・作曲 真部脩一


やってきた恐竜 街破壊
迎え撃つ私 サイキック
更新世到来 冬長い
朝は弱い私 欠伸をしてたの


太平洋 大西洋 ここ一体何平洋よ
盗んだわたしの記憶をかえして
CIA KGB FBIに共産党の陰謀よ
誰か私を逃して


飛んでったボイジャー 惑星破壊
なすすべないあなた サイコパス
環状線渋滞 先長い
待つのつらい私 ゲームボーイしてたの


北極星 超新星 流星群にお願いよ
誰か止めて あの子のスーサイド
新幹線 連絡船 運命線よおしえて
私明日は どこでどうしてるの



歌詞じゃなくて音に関して、
相対性理論(バンド)に対する他の批評を読んでみると、「ポストピコピコ」という扱いが多い。

絵で言うところのヘタウマというか、素朴でスキのある音が心地いいんだ、ということか。
バンドやっときながら、自分はいわゆる「音」のことは全然わからないのだが、
詳しいメンバーの人に聞いてみてもそうらしかった。


近所のレコード屋よりもはるかに少ないyohashiライブラリーの中でなんとか照らし合わせると、
「ちょっとフジファブリックっぽい」と出ました!


相対性理論『ハイファイ新書』批評感想レビュー地獄。


個人的にはもーあのピコピコガンガン界隈の音に飽きて来た(笑)。だって、みんなクオリティ高いんだもん。という非常に贅沢な飽和状態である。中田ヤスタカだって、鈴木亜美の曲までちゃんといい曲だし、本当贅沢極まりないとつくづく思う。


そんな中、次の一手が待たれる中、これと言って次が無い。そこで(書きかけの部分、いま直してるので中略)相対性理論が売れたのは、パフュームからの「ある流れ」が確実にあって、それはもうとっくに姿を変えてしまったけど、愛しい"サブカルチャー"という刺激だと思うの。『地獄先生』を筆頭にこれらの曲は歌詞が超面白いの。リズム×韻×ユーモア=が完璧で完成度の高いフィクションなの。


http://d.hatena.ne.jp/ayumu108/20090331

「リズム×韻×ユーモア」
で言うと、「つしまみれ」なんかもそうかもしれない。