西友KYCM『奥さんのクリスマス』編
KY(空気読めない)ではなくて、KY(カカク、ヤスク)でおなじみの西友。
そのCMのワンカットというか、主婦役の女優さんの表情が強烈に気になった。
気になった、としか書けないのは複雑だが、確かになんとも言えないが心に残るカオなのだ。
K(カカク)Y(ヤスク)じゃなくて、K(カオガ)Y(ヤバイ)。
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不景気を生きる現代の家族の、ちょっと笑える&笑えないシーンを描いて元気をくれるKYのCMシリーズ。
そのクリスマスバージョンが先週あたりから放送されている。
クリスマスというささやかな祝祭が近づき、毎日の家事育児にも気合の入る奥さん。
クリスマスツリーを準備して、いつものように掃除洗濯料理買い物、
チキンを買って、シャンパンを開けて、家族でパーティ。
子供を寝かしつけて、最後に待っている旦那さんからのプレゼント…。
ああ、幸せ!
そんなとてもいいCMだ。
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でも!
そんな幸せが打ち砕かれるような胸のざわつきが、
この奥さんの表情に喚起されてしまう。
なんということでしょう!
とりあえずCMはこれ。
問題の表情は、プレゼントを受け取る12−13秒の間。
こゎぁぁあああああああああ!!!!!!!
クレイジーケンバンドの曲、軽快だなー
中流階級の理想像を絵に描いたようだなー
まぁでもちょっと価値観が古いよなー
とぬるい感想を抱く心を打ち砕くこの表情。
どうすか!
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一瞬苦しんだような表情をしてから、強烈な笑顔に変わる様子。
これが、なんというか、怖い。
でも、もう見たくない!というほどの怖さ、恐ろしさではないし、かといって、「単なる違和感」ほど軽いわけでもない。
なんなんだろうなぁ。
気持ちが悪いので仮説を立ててみた。
・岩月謙司の「幸せ恐怖症」っぽいところが怖い?説
母親に嫉妬されながら育った女性が、「母親よりも幸せになっちゃいけない!」と思ってしまう女子特有の病を、「幸せ恐怖症」という。トンデモ心理学者扱いされる岩月教授の説の中で、これだけは割と説得力があるのだが、今回のCMの奥さんの表情も、幸せを拒否する表情だと読めなくもない。
この「あ!私、幸せになっちゃう!拒否しなきゃ!」という無意識の表れが、あのよじれた顔を生み出しているかと思うと、少し怖い。かわいそうというか、不幸というか、見ているこちらが辛くなってしまう。
(岩月氏の『女は男のどこを見ているか』について取り上げた記事が残ってました。@そこくるり2)
・表情が二重だから怖い?説
ミスチルの『ファスナー』という曲で、「すべてのものにはファスナーがついていて」僕が知らないところで牙を剥くつもりなんじゃないか?という精神病者っぽい「考えすぎ」な歌詞があったけれども、そういう二重性が見えるから、この表情は怖いのか?と考えた。
今回に限っては、「不幸な顔」のあとにちゃんと「幸せな顔」が訪れたからいいものの、もしこれが「不幸な顔」「幸せな顔」のどちらか片方だけだったら、とてつもない不安に襲われる気がする。「不幸なふりをして、実はとても嬉しいんじゃないか?」あるいは「幸せなのは顔だけで、心まで晴れやかではないんじゃないか?」、ポジティブにもネガティブにも考えすぎてしまう余地が、この「二重の表情」を見てしまったせいで、生まれてしまうのである。という説。
でも『ファスナー』は結局、「(相手が)牙を剥くつもりでも、信じてみる値打ちはあると思えるんだ」「惜しみない敬意と愛を込めてファスナーを…」と、「二重の表情」でも受け入れるんだ、それが大切なんだ、という寛容さで終わっている。
でも怖いもんは怖いしなぁ…。
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その怖さによる無意識の支配は、
僕の今日の晩飯にまで及んでいた…。
K(キムチ)Y(ヤキソバ)。
ああ恐ろしい!