LOVEマシーン〜RIKIバージョン〜 歌詞分析 −ポストモダンのその先へ

8月下旬に渋谷で夕飯を食べていたら、有線からある曲が聞こえてきた。




ふぅーうーーーうーーーうーーーーーー
ううううーーーーーーーーーーー







おいおい(笑)、何年前の曲だよ。
Loveマシーンて(苦笑)。リクエストしたやつ、一歩前へ出なさい(爆笑)。









と思っていたら、





みょぉーーーーーーーーーん
Let's Go!!





 
 
 


 

 












野菜つけ麺をふきだした。





暗い世相のニッポンにカツを入れるべく、竹内力の双子の弟・RIKIが吠えた。自身のトレードマークであるリーゼントのごとく、前を向いてこの国を元気にしようと「日本リーゼン党」を急遽旗揚げ。さらに10月リリースのニューアルバムではモーニング娘。LOVEマシーン」をカヴァーしたり、<ハッスル>に参戦(10月10日 両国国技館)したりと、活気と人々の笑顔を取り戻すべく、暴れ回らんとしている。



RIKIが「リーゼン党」を旗揚げ。鳩山氏の応援の中「LOVEマシーン」を豪快カヴァー
http://www.barks.jp/news/?id=1000052848


もう何も言うまい。
とりあえずyoutubeの動画を見て欲しい。



とりあえずPartyにしようじゃないか。



歌詞がちょくちょく変わっている。
1999年の本家Loveマシーンとどう違うか、少し分析してみたい。


LOVEマシーンRIKIバージョン〜」


みょーーーん Let's go!!


自分にゃ 関係ない(fu-fu-)
てなことは言ってられない NAI!
みんなに歌うくらい
イイじゃない!じゃない?


熱けりゃ もっと燃やせ(Heat Heat)
地球だって EVERY BODY バテ バテ
真夏の 鉄板焼き(Yaki Yaki)
「不況だ」って いじいじするより
踊っちゃえ! 皆で踊っちゃえ!


どんなに不景気だって
その分バケーション
遊んだもの勝ち
大穴 ラッキーさ


明るい人生 一生保障だぜ

Woo Wow Wow Wow


日本の未来は(Wow Wow Wow Wow)
世界がうらやむ(Yeah Yeah Yeah Yeah)
Partyにしようじゃないか!(Wow Wow Wow Wow)
Dance! Dancin' all of the night




なんだか もの足りない(fu-fu-)
ならばもっと ガツガツ行こうぜ
分別はゴミだけさ 人類平等に


不況はチャンスだぜ(チャンス!チャンス!)
逆転の発想!そう!そう!
ポジティブど真ん中
突き進め 光が見えるぜ
Big Smile! みんなBig Smile!


そんなの無理無理だって
ネガティブ 寂しい
騙され上手になって みたら?


試してガッテン 右肩上がりだぜ

Woo Wow Wow Wow


あんたの笑顔は(Wow Wow Wow Wow)
世界がうらやむ(Yeah Yeah Yeah Yeah)
夢があるんじゃないか!(Wow Wow Wow Wow)
Dance! Dancin' all of the night



fu-fu-fu-fu-)
fu-fu-fu-fu-)
fu-fu-fu-fu-)



(セリフ)まだまだ日本、そんなもんじゃねーぞ!



Love Love Love マシーン(Wow Wow Wow Wow)
Love Love Love ステーション(Yeah Yeah Yeah Yeah)
Love Love Love ファクトリー(Wow Wow Wow Wow)
Love! Love is so wonderful


日本の未来は(Wow Wow Wow Wow)
世界がうらやむ(Yeah Yeah Yeah Yeah)
Partyにしようじゃないか!(Wow Wow Wow Wow)
Dance! Dancin' all of the night


とーちゃんもかーちゃんも(Wow Wow Wow Wow)
じーちゃんもばーちゃんも(Yeah Yeah Yeah Yeah)
赤ちゃんも子供も(Wow Wow Wow Wow)
Dance! Dancin' all of the night


Love マシーン




LOVEマシーンRIKIバージョン〜」引用
(手打ちなので訂正前提。)


ネットに歌詞が上がっていなかったので、動画とにらめっこしながら手打ち。疲れる。
なんかもうどうでもよくなってきた。



でもやる。





1999年の9月9日にモーニング娘。Loveマシーンが発売。それから10年、早い。替え歌することをつんくも快諾、RIKIのアルバムに収録されることになった。

早くもリクエスト殺到、着うたで話題沸騰らしいが…ホントか?
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090912-00000975-bark-musi




とりあえず歌詞分析

左が本家モー娘。
右が今回のRIKIバージョン。


1番


不況を乗り切る、苦しさを緩和してくれるものは「恋」だった1999年に比べて、2009年はもう「享楽」しかない、というのがよく分かる。そしてそれは「自分にゃ関係ないなんて言ってられない」問題だ。


いつか爆発するのを夢見て「恋はDYNAMITE」と言っていたけれど、
もうそんな、爆発するかどうか分からない不確定なファンタジーは信じられない。だから「皆で踊っちゃえ!」、そう、踊るしかないのだ。DYNAMITEは、こっちから爆発させにいくぜ、みたいな。

「(笑)」と笑っている人間も含めて、踊る/踊らされるの表裏一体関係で、とにかく楽しもうぜ、というメッセージがここにある。


恋よりパーティなのである。



んで、2番



「不況はチャンス」、「逆転の発想」、果ては「Big Smile」と、防虫剤の匂いのするような、タンスの奥から引っ張り出してきた言葉が躍る。
そんな古い言葉を使ってでも、無理やりポジティブシンキング!それがRIKIマシーンの歌詞だ。


「恋のインサイダー」「キャンセル待ちの恋」みたいに、駆け引きを楽しんでいる場合ではない、そんな切迫感。騙され上手に(=ベタに)なれ、という命令。「試してガッテン」した自分の了見しか頼りにならない、という覚悟めいたもの。
などなど、生き辛さがよく伝わってくる。


そして、「夢があるんじゃないか!」の言葉の重みは、両者で全然違う。





間奏から最後のサビ
(どうでもいいが、間奏中のPVは手抜きしすぎ)



モーニング娘。も、あんたもあたしも、みんなも社長さんも、
とか、のん気なことは言っていられなくなった。



「恋」とか「未来」とかいうファンタジーをみんなで一緒に信じられたのが1999年。あるいは、信じようとしてなんとか成功したのが1999年。
バブル後でいろんなことが信じられなくなってきたけど、もう一回、ウソでも信じてみようよ、という「ネタ」感がウケて、モー娘。マシーンはミリオンヒットしたんだと思う。


しかし2009年、恋とか輝かしい未来とかはもう信じられなくなった今は、手の届く範囲の「家族(めいたもの)」を大切にして「楽しむ」しかない、という。湘南之風やらHome made 家族ほか、「家族」「ブラザー」みたいな血縁に近いつながりを謳った歌詞がJ-POP界を席巻してきたが、このRIKIマシーンも間違いなくその系譜だろう。



ある種の原点回帰、なのかどうかは分からないが、今売れているものと同じ構造を持っていることは確か。
だからこの歌詞はやっぱり「うまい」し、ヒットしそうな予感がする。




記事のBGMとして流していたが、やっぱり元気が出てきたぞ。あれ、踊らされてる…!?

一応モー娘。バージョンもこちらに。




自身も所属する症候会議のイマダ氏の連載にて、ポストモダンのその先は何か?という問いが立てられていた。
その観点からすると、このRIKIマシーンはもしかしたら「ポスト・ポストモダン」にあたる動きかもしれない。


引用の引用だが、

「歴史は繰り返す、ただし一度目は悲劇として、二度目は喜劇として」とマルクスが引き合いにしたヘーゲルのセリフにありますが、ニーチェモダニストたちが演じた悲劇の二番煎じがポストモダニズムである。意地悪く言えばそうなります。ニーチェやホセ・オルテガ・イ・ガセットの口まねの近代批判、大衆批判がそれ自体知的ファッションとして大衆化し、大衆が大衆を(自己批判という痛烈な自覚なしに)批判して楽しむというお笑い沙汰、それがポストモダニズムだ、と。

『モダンのクールダウン』p16


明治維新以降の近代日本が経験した「繰り返す歴史による悲劇」(=一度目)は「敗戦」だった。
とすると、二度目は「バブル崩壊」になるかと思う。そんなバブル後の低迷期を「喜劇」に仕立て上げた、笑えるものにした立役者が、1999年モー娘。の「Loveマシーン」だったのではないだろうか。


そして、3年ほど前までの好景気すら倒れてしまった2008,9年、歴史は繰り返した。
一度目は悲劇、二度目は喜劇、三度目は? その答えがRIKIマシーンの中にきっとある。

では、そのポストモダンの次に来る「ポスト・ポストモダン」とは、いったいどんな世界なのだろうか。

僕はもしかすると、周期的な時の移ろい以外何も変わらない前近代あるいは中世のようになるのではないか、と最近思う。その具体的な像こそが、冒頭で挙げた出川哲朗ダチョウ倶楽部、近年における両者の受容のされ方、お笑いを一種の伝統として披露するそれなのだ。


moso magazine 2nd GIG グローバル・ヴィレッジって、だれがいった?
http://d.hatena.ne.jp/symptom07/20090909


踊る阿呆に見る阿呆、とはよく言ったもので、
現在はそこに「(笑)う阿呆」が加わったくらいだ。

だから「周期的な時の移ろい」を何度も繰り返して、それこそ前近代的な「祭り」のように、みーんなで楽しんでいきましょうやぁ(RIKI談)、という時代が、ポスト・ポストモダンとして続いていくんじゃないかなーと、そんなことを思った。





だからまた数年後には、
Loveマシーン 大橋のぞみ ver.」が出て、
エヴァンゲリオン 起」「−承」「−転」「−結」が公開されて、
「19∞4 村上春樹」がベストセラーになって、
という「日常」が繰り返していくんじゃないだろうか。



■■追記
Loveマシーン誕生秘話がありました。


・「LOVEマシーン」が生まれた日。つんくの歌唱指導
http://d.hatena.ne.jp/tvhumazu/20090909/p1


ダンス☆マンの「LOVEマシーン」制作秘話
http://d.hatena.ne.jp/tvhumazu/20090909/p2



Loveマシーンつんくのデモテープは93年に既にあったらしい。
それに1週間で歌詞をのせたと。ダンス☆マンもアレンジが超速。


「喜劇をつくるんだ」という何か使命めいたものを、つんくは感じたんだろうか。
何か憑依してないと、そのスピードと切迫感は無いよなぁ、普通。